パトレイバー2とROE

こんにちはHIDEです。

昨日のフジテレビ”日曜報道 THE PRIME”で中東に派遣される隊列を組んだ制服姿の自衛官の映像のバックに「パトレイバー2 THE MOVIE」のタイトルバックの曲が流れていて、はっとさせられました。

もともとこの映画は自衛隊のレイバー部隊がPKOで東南アジアに派遣されジャングルで敵に遭遇するも最後まで本部から反撃を認められずに隊長以外は全滅するシーンからスタートします。今回のニュース映像を作ったスタッフがこの映画の内容を前提としてこの楽曲を採用したかどうかは不明ですが、ある種の示唆を含んでいると感じた視聴者は私以外にもいたことでしょう。

・Roules of Engagement(部隊行動基準)とは

ROEについては自衛隊の海外派遣のたびに問題になりますが、軍隊で状況に応じての各種武器の使用等、戦闘行動の内容をあらかじめ定めておくものです。憲法9条の規定により「交戦権」を認められていない為、本来、「交戦規程」と表記すべきところ、自衛隊では「部隊行動基準」と表記します。「歩兵科」を「普通科」と言い換えているのと同様です。

・現在の「部隊行動基準」の問題点

今回の派遣は護衛艦1隻とP3C(対潜哨戒機)2機を派遣してソマリア沖のアデン湾などで情報収集することが任務です。情報収集任務の場合は「正当防衛・緊急避難」以外での武器の使用はできません。付近に日本船舶がいても警護はできません。仮に日本の船舶が襲われそうな場合、状況を報告の上、任務として「海上警備行動」が発令されれば、警護活動と警察権の行使としての最低限の武器の使用が可能となりますが、その為には防衛大臣から総理大臣に要請して承認される必要があります。

さらにここまでの武器使用はすべて「自衛権」の発動ではない為、個人の責任において使用することになります。(警察官と同様です。)つまり”やりすぎ”たら、過剰防衛で刑事罰をうけます。

他にも「武力行使」を憲法で禁じられている自衛隊は国際基準の枠組みに依拠することができず、日本独自の法的制約のもと活動することになります。国際協力等で海外に派遣される自衛官は過去の実績でもわかる通り、他国と比べても特別優秀です。しかし、「現実離れした基準」で縛ったまま「戦闘地域」に放り出して、いざとなったら、「個人の責任で臨機応変に対応しなさい。」ではあんまりです。

 

「平和主義」という名前の「思考停止」ではなく現実的な選択肢を検討すべき時期だと思います。ここで、最初のお話。「パトレイバー2 THE MOVIE」は1993年の公開です。前年の1992年6月に「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(PKO協力法)が公布され、9月にはカンボジアに自衛隊が派遣されています。

ともすれば、派遣ありきで物事が進む中、一部の専門家からは「交戦規程」に関する問題も提起されましたが、国会ではあまりにも無責任な言葉遊び、机上の空論的な議論しかなく、携行する武装は決まりましたが、運用に関する規定はろくに整備されないまま、派遣されていきました。

「パトレイバー2 THE MOVIE」は、そんな状況に警鐘を鳴らした「押井守作品」でした。

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